2013年8月 1日 (木)

持たざる国への道

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著者は、財務省出身の現役官僚(現内閣府事務次官)。

財務・金融政策を焦点に、大日本帝国の破綻を分析。

政治・軍事面だけでは、今ひとつピンと来なかった事がストンと腑に落ちた。

日露戦争は、米英との協調により何とか勝つことが出来た。

帝国主義競争にデビューを果たした日本は、中国大陸での利権について、米英との対立を呼び込んでいく。

大のお得意先と敵対して、国家の経営が成り立つはずはない。

何よりも戦略の基本は米英協調による経済発展が基本のはずながら、経済合理性の視点を欠いた方向性を主導する軍部と、近視眼的判断でそれに追随する政界。

米英(大得意先)との対立が、経済の停滞を招き、軍部は経済合理性の視点を欠いた政策(満州事変・上海事変)を選択、結果、決定的に国内経済を悪化させ、その原因を米英の陰謀というわかりやすいスローガンに置き換え(原因と結果の逆転)ることで、論点をを単純化。合理的な選択肢は、感情的議論の果て、ドンドン後退。引き返すことの出来ない道を転がり落ちることに。

経済合理性の視点を欠いた政策論が横行するのは、いつの世も変わりが無い

もう一つ、明治初期の國立銀行についての誤解が解けた。

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2013年6月 2日 (日)

黙阿弥

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先月亡くなった著者、河竹登志夫は、幕末明治に活躍した歌舞伎狂言作者のお孫さん。

黙阿弥の作品は、現在上演される歌舞伎狂言の中でもダントツに多い。
坪内逍遙は、日本のシェークスピアとその功績を讃える。

幕末から明治にかけての大変革期。
国宝の寺院が薪として売却されたけど、モトが取れないので破却まぬがれたような価値観がひっくり返るエライ時代。

歌舞伎狂言も同様のエライ大嵐が起こる。その荒波の中でも河竹黙阿弥が時代を超えた作品を残し得た実像を、研究者として、血縁者として淡々と記述する。

江戸文化の熟成の雰囲気。
明治の演劇革新の実態。

あ〜そうだったのか。と、何度も得心させられた。

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2013年5月 6日 (月)

1417その一冊がすべてを変えた

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古代ローマの幻想詩人ルクレティウスの書『物の本質について』
古代ローマの知識人達に最も引用されていたとされる著作。
歴史の闇に消え去っていた本が、中世修道院の図書館から、一人の男によって”発見”される。

この本が、モンテーニュ、ボッティチェッリに影響を与え、ルネサンスの源流となり、ジェファーソンを通じアメリカ合衆国憲法にも影響を与えたらしい。

そんな、古代と近世の邂逅の事実が、丹念に淡々と記述されている。
2011年全米図書賞&2012年ピュリッツァー賞ノンフイクション部門受賞作。

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2013年1月21日 (月)

龍馬史

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面白かった。

本の帯には、龍馬暗殺に最終結論くだる。
とある。

著者は、武士の家計簿を書いた磯田道史さん。

古文書の追跡には定評のある著者が、掘り出した最新の希少資料や、従来の文書(もんじょ)を再評価しながら、龍馬暗殺事件の詳細を科学的に実証していく。

派手な帯の文句とは反対に、淡々とした記述が、著者の実証の信憑性を裏付ける気がする。

専門家はいざ知らず、素人としてはナルホドと、うなづくばかり。

坂本龍馬や、日本の幕末史に興味のある人にはおすすめ。

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2013年1月20日 (日)

政友会と民政党

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戦前日本が経験した政友会と民政党による二大政党制。

1930年総選挙に浜口雄幸率いる民政党に敗退した、犬養毅率いる政友会の新経済政策は次の3点。

不景気打開策
失業問題、社会政策
国民負担の軽減

今、これらのスローガンを掲げても充分議論になる。

二大政党による政策論争は、浜口首相の遭難などの事情もあるが、世界恐慌、軍縮問題など難問山積。党利党略を優先した挙げ足取りが激化し、民主主義が機能しなくなる。

良識的な言論は、扇動的なそれに押し流された教訓があるが、それに学ぶことはナカナカに難しい。

 

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2012年12月25日 (火)

磯田道史

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磯田さんは、埋もれた古文書の発掘には定評のある方。
とある古文書が、加賀藩士の幕末期三代に渡る家計簿であることに着目し「武士の家計簿」を上梓、ひょんな事からこれを元に映画まで出来てしまった。
NHKBS歴史館でも度々お見受けする。

この春、茨城大学から静岡文化芸術大学に転勤。その理由が素晴らしい。

東北大震災以降、過去の災害記録に対する注目度が急上昇、古文書の発掘のスピードに定評ある著者は、自ら進んで、その危険性の高いであろう地域に異動、災害関連の古文書収集、解析にあたる実践者となるためであった。

過去の記録によれば、古文書の記録から以下のことが読み取れるという。

  • 日本列島の地震活動期は、500年サイクルである。
  • 地震活動期には最大で前後20年は大規模地震が頻発すること。

これら古文書の研究を元に、近い将来起こるであろう東海、東南海地震への警鐘を鳴らすことを使命として研究を進めていらっしゃる。

地震関連以外でも、関ヶ原の退却戦で名を馳せた島津家の強さについての考察は秀逸と思う。

当時の常識とは異なり、島津家では上級武士も鉄砲による武装が一般的であった。
その事による火力の差が島津家の強さであるとの分析等々。

時間を忘れて一気に読了。今日はかなりの寝不足でした。

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2012年12月22日 (土)

田中角栄-戦後日本の悲しき自画像

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田中角栄が良くも悪くも、日本の体制に大きな影響を与えたことに間違いない。

既存のエリート層で無い彼が、人間的魅力と才能を武器に内閣総理大臣にまで駆け上がるまでは輝いていた。
後半生は一転、不本意な事であったろうと思う。
今太閤と呼ばれた彼の人生が、奇しくも豊臣秀吉に重なる。
秀吉も、本能寺の変から賤ヶ岳の合戦くらいまでが本当に輝いていた様に思う。
天下統一以降は、田中角栄同様・・・。

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2012年9月24日 (月)

全国アホ・バカ分布考

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探偵ナイトスクープから生まれた言語学史上貴重な実証例の一つとか。方言周圏論の有力な研究例とか。

「アホ」と「バカ」の地理上境界は?
という、視聴者の素朴な疑問からスタート。東海道を東上してその境界線を探るという企画から始まり、全国的に単語を収集し、実証研究的に論考した本。

ちなみに、関西の「アホ」圏と、関東の「バカ」圏に挟まれた東海地方は、「タワケ」圏らしい。

この本によると、方言は京都を中心に年1kmの速度で広まっていったという。

ただし、全ての方言がこの原則に当てはまるわけでも無いらしく、東北から北海道にかけて分布する「アホ・バカ」を表す方言「はんかくさい」は、この本によると、京都の島原遊郭で使われた言葉が、北前船の船乗り達によって、飛び石的に広まった例外らしい。

当地の「がいな」も、瀬戸内沿岸から山陰、新潟など日本海沿いに点在するので、この例外的伝播の一例かも。

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海軍主計大尉小泉信吉

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知人の形見分けで頂いたモノを再読。

著者は昭和8年から昭和21年まで慶應義塾学長をつとめ、戦後皇太子時代の今上陛下の教育係をつとめた。
戦死されたご子息を偲んで書かれた私蔵版が、著者の死後周囲の尽力で公刊された。
戦前の「東京山の手」にあった慈愛溢れる家族の様子がうかがえる。

オフセット印刷にはない紙面のかすかな凹凸、インクのかすれ。 久し振りに活字印刷の本を味わう。

 

 

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2011年7月 9日 (土)

古典で読み解く現代経済

Kotenkeizai大きな事業を抱えた(抱えさせられた?)せいで、恐ろしく忙しくて余計な事している暇がないのに、うっかりアマゾンでクリック、その上こうしてブログ投稿。

逃避行動が押さえられない。

でも、すっきり納得の一冊。ある種ストレスの解消。

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